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大阪高等裁判所 昭和30年(く)33号 決定

本籍 朝鮮全羅北道○○郡○○邑○○町○○番地

住居 枚方市○○○○ ○○○○方

少年 ○戸○夫コト 林半治(仮名) 昭和十二年十二月十二日生

抗告人 少年

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の要旨は、

一、自分は原決定に記載せられたような窃盗を行つたことはない。

二、それでも尚、自分がその窃盗を行つたと認められるなら、○川○も其共犯者と認められるべきである。それに同人は審判の結果、試験観察に付せられている、自分が中等少年院に送致されるのはそれに比べて不公平である、

というのである。

ところが、右一についていうと、記録中の司法巡査中井功、岡完共同作成の現行犯人逮捕手続書、坂本千代子作成の被害供述書、中井功の検察官に対する供述調書によると、少年が原決定に非行事実として記載せられた窃盗を行つたと認めるのに十分であるし、その反対の認定をするに足る資料は少しも存在しないからその言分は採用出来ない。次に右二についていうと、成程○川○が右少年の窃盗を行つた際に傍に居たこと、並に同人が審判を受けて試験観察に付せられたことは記録上明らかであるが、同人に対する其処分は、同人を少年の右窃盗の共犯者であるとし、しかも少年と全く同じ環境、前歴、素質等を具えたものと認めながら、ことさら之を寛大に取扱つたのであると認めべるきではなく、それは、同人について同人独特の諸事情があり、また前記窃盗にも共犯関係があるとはいい切れないからそれらの点を斟酌して右の処分がなされたものであることが記録上窺われるのである。だからして同人に対する右処分を標準として、少年が自己の受けた処分が酷であるというのは正しくない、寧ろ、記録全般を調べた結果によると、少年には前記窃盗の非行事実があるほか原決定に「主な問題点」として掲げられた諸般の事情が存在することが認められるから、それらを綜合すると、少年を中等少年院に送致するとした原決定には何ら不当な点がないということが出来る、本件抗告は理由がない。よつて、少年法第三十三条第一項後段の規定に従い主文のとおり決定する。

(裁判長判事 斎藤朔郎 判事 網田覚一 小泉敏次)

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